少し前の話題になってしまいますが・・・
今月7日(土)、ハンブルクでは「劇場の夜」というイベントがありました。これは4月にあった「美術館の長い夜(Langenacht der Museen)」の劇場版。
ハンブルク市内にある約40か所の劇場が、16時から深夜0時過ぎまでそれぞれオリジナルプログラムを上演し、20€(前売りは15€)のチケット一枚ですべての劇場が行き放題になります。この開催に合わせて、各劇場を行き来する特別バスも運行し移動を助けてくれます。
このイベントの常連だというドイツ人の知人がすべて予定を組んでくれ、私も夕飯をゆっくり食べる暇もなく3か所の劇場を渡り歩きました。
まず足を運んだのは、中央駅近くにあるKrimi-Salon im Maritim Hotel Reichshofという劇場。
Krimiとはドイツ語で「探偵もの、推理もの」のこと。ドイツ人のこの手の作品好きは有名なようで、テレビでも毎日サスペンスドラマが必ずやっています。さらにここの劇場は、会場が普通の客席と舞台ではなく、本物のホテルのレストラン。普通のレストランのように席につくと、役者がそこに颯爽と登場し、レストラン内(客席)を歩き回りながら目の前で演技をするという、なんとも面白い演出。
俳優が「ご主人様は・・・まさにここ、この図書室で亡くなったのです!」と言うと、本当にそこが豪華な図書室になったような錯覚に。20分ほどの舞台で、内容は・・・なんともオチがないというか、いまいちだったのですが、何よりすべてドイツ語なので私にはまだ理解するのが難しかったです。
とはいえ、こういった趣向の舞台は初めてだったので新鮮!
次に急いで移動したのは、常に英語劇を上演しているというEnglisch Theather。
なんとか席を見つけることができました。小規模な劇場で、20分ほどの「Stone Cold Murder」というサスペンスでした。すべて英語なので、前述のドイツ語のサスペンスよりは幾分か理解しやすかったです。俳優さんもドイツ人ではなく、英語のネイティブスピーカーだとか。
その後は私のリクエストを聞いてもらって、私ももう何度か足を運んでいる州立劇場(Staatsoper)へ。私のお目当ては、オペレッタ「こうもり」(Fledermaus)の特別公演。人気だと思い早めに行って、そのひとつ前のプログラム、21時30分からのバレエ「オテロ」(Othello)から鑑賞しました。このオテロが満席だったので、バレエのほうが人気なのか・・・と思っていたら、このバレエ団の芸術監督、ジョン・ノイマイヤー氏が壇上に登場し、直々の作品解説。そしてこの秋から上演するという作品の一部を見せてくれました。
完全なモダンバレエで、なんとも理解しがたい部分は多かったものの・・・アジアの武術をイメージするような、格闘技のようなアクティブな振り付けが多くて楽しむことができました。
少し休憩をはさんで、22時45分からは私のこの日のメイン、オペレッタ「こうもり」。
この作品、観たことがある方はご存知だと思いますが、男性ながら女性の音域で歌う「カウンターテナー」が演じるオルロフスキーというロシア貴族の役がなんとも面白い。日本ではなかなか演じられる歌手がいないのか、私がこれまで観たのはすべてメゾソプラノの女性が演じていました。
しかもこの日の歌手は、髪をオールバックにした・・・なんとも男臭いおじさん。いかにも低いバリトンといった風貌の彼が、ソプラノの音域で歌いだした時の劇場の反応が面白かったです。ざわめき・・・からの喝采!
華やかなパーティーシーンの2幕の演出で、途中解説をはさみながら名曲を披露してくれました。ちなみにこの日の司会者は、ブルーのギラギラしたスパンコールのジャケットを着て、ちょっと下ネタも交えて話す変なおじさん。なんでも彼は、ハンブルクの歓楽街「ザンクト・パウリ」にある劇場の支配人であり有名なコメディアンなんだとか。普段では絶対に州立劇場の舞台と彼のトークは楽しめないはず。
(カウンターテナーの歌手に「声を高くするために、去勢したの?」と質問して、歌手もしれっと「まだあるから大丈夫、ありがとう」と答えるやりとりはツボでした。)
途中、指揮者が私たち客席にタクトを振ってくれて、歌手と一緒に歌を歌うシーンがありました。すかさず司会者が「これであなたたちも、ハンブルクの州立劇場で歌ってきたと言えますよ」と言ってくれました。確かにいい思い出!